「先生、もう少し気を楽にされて下さいよ。」
「えっ?」
唐突にクーさんから声がかかる。とりあえず、説明も終わったから、少し頭をクールダウンしている最中だった。
「肩の力を抜いて下さい。そんな、教授に会う前からそんなに肩に力を入れていたら、大変ですよ。うちの嫁みたいに、頸椎が90度変わりますよ。」
ちょっと、嫁を呼んで来ますわ。
そう言えば、何か、途中からウチャンと話している時、時々、電話をしていました。誰とも聞く訳も行かず、ただ、モヒカンのアンちゃんを見ていました。
駄目だ、スタバでは無いと言っているのに、反対側に行き寄りました。もう、あかん。何も分かっていない。などと、独り言を言いながら、クーさんは席を立つ。
「迎えに行かれるみたいですね。」ウチャンの声。
この疾患と対峙していると理解できるまで、頸椎を何気に追っていると頸椎のアライメントが変わっている気がしてきた。何度も、追う度に変わっている気もした。
で、医者の友達にセファロを見せた事がある。
面白い現象だった。
まず、この患者の頸椎どう思う?
「湾曲性が全然ないね。」
その後のレントゲン。
「お、湾曲性が変わったね。湾曲が出てきたじゃない。整形かどこかに依頼をしたの?」
そう
?「だろ、牽引すると、こんな効果があるはずだよ。」
と言う事は、変わった事を認めるのだよね?
「あたりまえじゃないか?整形が変えるのさ。」
御免、歯科治療で変わったのだけれど…こんな事があるのか、分からなくて聞いてみたいのだけれど、どう思う?
「まさか、歯科ではあり得ないよ。それは、気のせい。これ、見かたを間違えたのかな、もう1回見せて。」
変わっていると言うしかないけれど、たまたまだと思うよ。
じゃあ、これって、どういう意味か見解を求めた場合、どうだろう?
「無理だね。あり得ないから。」
次々と、セファロを見せる。同じ患者では無い。
「変わっているというしかないね。」
だろ?
ならば、どうしてそうなるか、医科の先生に考えて貰う事って出来ないものか?歯科医の俺が、こんなに始終変わるのを見て、冷静にいられると思う?
「ま、気のせいとか、考えすぎと言われるのが落ちでは無いかな?」
「というか、牽引だろ?実際は?嘘言わずに、正直行ってごらん。怒らないから。恥ずかしくないよ。」
歯科治療だって云って、信じる気はあるか?
「歯医者の仕事は歯を削る事だろ?身体に症状が出るなんて考えすぎだよ。あり得ない空想科学に酔っても仕方ないよ。だから、悪いけれど無いね。」
「歯科の学会に出せば?」
何て言う具合に・・
「簡単、歯科治療で頸椎がこんなに変わります。どうすごいでしょう?で、どう?」
馬鹿にしていない?
「どうして、真剣だよ。どこがおかしいか、分からないよ。」
皆さん、歯科治療で首がこんな風になります。気をつけましょう。怖い事ですね。理由は分からないけれど、あり得るのです。こう言えっていうのか?
「そう、マスコミはあんたの取材にくるよ。どうしてですか?もう、それで一躍時代の寵児。それでよくない?よ、有名人!」
何で、そういうかな?
「あり得ないからね。あり得ない事をあり得るっていう方向性に持っていこうとしている君の愚かさを、僕は心配しているよ。まず、相手にされないから。」
「本当に君は愚かだよ。その愚かさが分かっていない事が凄いと思う。」