クーさんの話から、随分話がそれた。でも、彼は、何度も聞きてくる。”メリットは?“何度もメールで答えるのだが、合点を貰えない。あたしの考える事象が科学的論点に立脚しているか判断を貰いたい。
この台詞では、幾ら話しても合点を貰えなかった。別に、タイと言う国で開業をしたいという意思も無いし、有名になりたいというエネルギーも無いし…有名など性に合わない。
公の存在としてこの国からライセンスを頂いている事だけで、個人としては十分。公だから、公に考えを出す必要があるのかなって、考えて勝手に、気の向くまま書いているに過ぎないのだが…気の向くままは、あたしの勝手ですがね。書くひな型がある訳でもなく、HPの世界は、いい意味でも悪い意味でも自由と言うか、無法地帯かもしれない。只、勧誘商法的書き方や、不安増長での患者誘導だけはしたいとは思っていない。只、こんな所で治療を受けたいという方と出会えれば、それで良いと考えている。それが一期一会と言うものだと勝手ながらに、心得ている。
「いや、本当にこの考えがいいのか、どうか、科学性に立脚しているかどうか、それだけを知りたいだけなのです。」
“ほんまでっか?”
「本当にそれだけです。それ以外も以下もありません。」
“ほんまでっか?”
「はい。それだけです。」
“ほんま、それだけの為に、わざわざ日本から来たのですか?それ以外は無いのですか?”
「はい、ありません。一期一会と言う言葉があります。私にとって、教授とお会いできるのは、これが最初で最後かもしれません。欲張っても仕方が無いです。只、お手紙や、メールにさせていただいた通り、只確認したいだけなのです。」
“そんなんでいいのですか?”
「それで十分です。」
“欲ありませんね。”
「いえ、これだけでも十分欲求だと思うのですが…」
“そんだけの事の間に立てばいいのですね。”
そうなのだ。相手はタイ語か英語。こちらは度胸の英語で、言うなれば、当たって砕けろしかない…
そういう意味では、タイ語のいけるク−さんは心強いはずだし。英語もいけているクーさんも鬼に金棒のはずだった…
ま、そのだった…は、あと後明らかになるのだが、今はこれぐらいにして、話を続けたく思う。
“いやあ、それなら、楽ですわ。気楽に行きましょうや。”
気楽に行きたかったのが、これでは分からない、あれでは分からないと、メールをひたすら送る羽目にさせたのは、おたくよ、クーさん。ここまで出かかったが、喉に戻した。目的ではなく、何故そうなるのか、もっと具体的に教えよ。こいつには正直、参った。タイに行く目的と大幅に違う展開だから、何度も揉めた。静かに行きたかったのにさ。
結局、教授には、翻訳家を介して、手紙を渡す事にした。これでは訳せない、こんな事は考えづらい。目的語がいつしか、方法手技の話になって正直、嫌になっていた。だから、全てを英訳にしてお渡しする事にした。
その内、紹介出来れば嬉しく思う。
とにかく考えづらい、あり得ない。考えすぎ…おかしい。もう、ごちそうさまです。
この言葉シリーズに癖々していたあたしにとって、いつからか別の事を考えるようにもなっていた。そうそう、ついでに気が付いた事。英語が出来れば、別に、ここにこだわる必要も無いという事。この指す“ここ”は、読み手にお任せしたく思いますがね。
“ほんま、先生、それだけの為にタイに来よったのですか?”
「はい。」
“訳分からんわ。しかし、ウチャン、元々、これって、講演会を開こうだったんじゃないですのん?”
まあ、言葉の行き違いと言うものもある物さ。こんなの当たり前と、二人の会話を聞いていた。
しかし、何故、こうも日本の方は杓子定規に、理屈をこねるのが好きなのだろうと思いながら…筋肉質の兄ちゃんを、窓越しに覗いていた。
“先生、もう少し気を楽にされて下さいよ。”
「えっ?」