そんな事を考えながら、ボーっと、二人の会話を聞き入っていた。
“ところで、先生は、何をしにタイに来よりました？”
ようやく、あたしの方に話が振られた。もしかしたら、今までの会話は、あたしをリラックスさせる為のク−さんなりの、気づかいかもしれなかった。どうも、人みしりと言うか、固くなる傾向が初対面の方に対してはあるらしい。良い悪いではないと思うけれど…
「ですから、メールでお話させていただいた通り、あたしの考え方が、成立するのか、むしろ、逆に成立しないのか、それだけを確認しに来たのです。」
“それだけ？”
「それだけですよ。」
“ほんまですか？”
「本当です。」
“それって、先生に、何のメリットがあるのです？”
メリット？
メリットという言葉なぞ考えた事はない。もし、あたしの気が付いた事象が、正しいなら、おそらくＷＲＭにせよ、あるいは、ＷＲＭに於いて痛みの場所、部位、性格で、 WAD、TMD、CBS、FMS、NSM、 LBP等に分類されるこの疾患に関して光明が見いだせるかもしれない。
少なくとも、ＷＲＭにおいて、先に紹介したものとは、本質を一致する物と受け止められている。であるならば、繊維筋痛症でもいい、少なくともメカニカルの解明に役立てばそれは、それで素敵だと考えていた。別に有名になりたいとか、名声を得たいとも実は思ってもいない。だって、市井の開業医は、食べていけて何ぼ、きっちりとした治療を行って何ぼと思っているからだ。この質問が、言い方を変えれば一番、あたしには痛いかな？
別にここで紹介する意思はないが、その仮説メカニズムを少しアレンジしたところで治療を行っているだけに過ぎない。勿論、診断は仮説でも何でもない。診断は診断だ。
少なくとも、保険病名にあてはめて考えるのではなく、ヒトを見て、ヒトの病態を考えて、そこから歯科的問題を考えて、全身との兼ね合いを考えて治療計画を立てるだけだ。
只、この仮説メカニズムは、治って行く様を見て行くと、やはり正しのではないかと考える様にもなっている。
例えば、こんな診断をする事もある。
診断）Occulusal imbalance から派生する、咬合感作異常によるmuscular relationの誤作動。結果、以下の派生現象を認める。
筋骨格障害musculoskeletaldisorders による、固有感覚proprioception 姿勢維持postural retention、運動協調coordination などの障害が派生。活動障害に発展。俗に言う、慢性作業関連性筋痛症chronic work-related myaglia;WRMと判断。顎関節症、頚肩症候群、繊維筋痛症まで発展したものと考える。
全身的には、筋の痛みmuscular pain、不快感hyphedonia以外に、痛みの生じている筋の凝りstiffnessの感覚と、疲労感fatigueから、静的な労働負荷や反復性の動作で悪化するという傾向をここまでの過程で認めている。
これは、TCH（teeth contacting habit）より生じている物と考える。これは、articuler surfaceの問題が大いに関係し、残念ながら、歯科処置が全顎的に不適切である事も、その一因に貢献していると考えざるを得ない。
別に、あたしが病態を把握する上で、そして患者に理解をして貰う為に提出する物ですが、こんな事があり得るかって？
それは読まれた方に任せます。
別にあたし独断で診断した訳でもなく、この症状のお持ちの方、別で繊維筋痛症と診断されたあたしとは違うライセンス者。ヒアラルキー的には、あたしの上。
でも、医師だって色々な病にかかるだろうし、医科だけで対応できるとは限らないような気もするけれど、絶対に関係が無いと言い切るドクターもいらっしゃるから不思議。そんな人が、罹って歯科に頼らなければならなくなった際、どうなるのだろう？変更する考えの枠はお持ちなのでしょうかね？
時々思います。関係が無いと言い切るならば、同時に科学的根拠なり論説を加えて、学会なりで、正式に言い切ればいいと思うのだけれどね。でないと、発展と言う言葉は生まれないと思うのだけれど、関係ないのですよね…
観念だけに縛られていい事あるのかな？