ところで話を変えて、後2点ほど。横隔膜って、呼吸に関わります。姿勢に関わります。そして、嚥下に関わります。嚥下は歯科領域の気もするが、そして、この嚥下に関わる横隔膜という存在自体がある以上、身体に歯科は関係が無いと言う言い切りが出来る根拠は、どこにあるのか、その明瞭、明晰過ぎる断定の根拠に、想像力はひたすら悩む。
TMJが、顎関節自体の症状のみを診る事主眼に置いているのだから、全身と関係ないとは、自明と思われる。言葉のどこにも、身体を指す文言はない。だから、顎関節症は、全身とは関係ないと言う言い方は、言霊思想からは成立するのかもしれません。
顎関節症(ガクカンセツショウ)
Temporomandibular joint disorder,
顎関節部に著明な炎症症状を認めないが,顎運動時の関節部の疼痛,関節雑音,顎運動異常などを主症状とする顎口腔系の機能障害症候群の総称
『医学書院 医学大辞典 第2版』 医学書院
しかし、この総称は、もしかしたら、先人達の知恵だったのかもしれないと、私個人は思ってもいます。只、その意味をどのように見直すかと言うと、また別なのでしょうね。
TMDが、disordersが示す通り、機能に於いては、異常、障害、疾患を示す。
精神的な異常、障害を指す。この診断名が醸し出すもから、少なくとも、安易に精神的因子に置いて、精神科に行けと言う単純な物にして良いのかと、また悩む。
日本語に戻すと、顎関節症ではなく、正確に言えば、側頭下顎障害で、活動障害というジャンルが既に存在する事を暗示していないのだろうか?
Temporomandibular disorders;TMD
『医学書院 医学大辞典 第2版』 医学書院
口腔顎顔面部における筋肉・顎関節および関連組織を包括した機能障害で,疼痛,関節雑音,顎運動制限などの症状のほか,頭痛,肩こりなどの関連症状を有することもある。咬合,歯ぎしり,ストレスなど多因子により発現すると考えられている。20歳代の女性に多い。治療はスプリント療法,理学療法,外科療法,カウンセリングなどが行われる
『医学書院 医学大辞典 第2版』 医学書院
⇒理学療法
マッサージ・温熱・電気などを用いる物理療法と、筋力増強・機能訓練・歩行訓練などの運動療法とを組み合わせて、運動障害の回復・改善をはかる治療法。
『広辞苑 第六版』 岩波書店
一方、Temporomandibular pain and dysfunction syndromeにおいては、顎関節周囲組織の痛み、機能障害と機能異常と、機能不全を意味する。これも、ジャンルで言えば、活動障害に含まれる。更に言えば、syndromeが持つ意味は、一群の徴候や症状で病態が形成されている。この、言葉は種々の異なる原因が同一の病態を示す事が多い、そんな事を暗示している。
これを、細分化すると、更に色々な表現を、ここに提示しなければならないから、面白い現象だと思う。参考までに
Temporomandibular arthritis
顎関節症(側頭骨顎関節の非感染性の変形性機能不全で,疼痛,軋音,下顎の開口制限を特徴とする.(myofacial pain-dysfunction syndrome).
『ステッドマン医学大辞典 改訂第6版』 メジカルビュー社
Myofacial pain-dysfunction syndrome
筋筋膜疼痛〔機能障害〕症候群
(そしゃく筋の痙攣に関係したそしゃく装置の機能不全.咬合協調障害や顎の垂直寸法の変化が誘因となり,情動ストレスで増悪する.耳前部の痛み,筋圧痛,顎関節のはじけるような音,下顎の運動制限を特徴とする).=Temporomandibular joint pain-dysfunction syndrome; TMJ syndrome
『ステッドマン医学大辞典 改訂第6版』 メジカルビュー社
がくかんせつしょう【顎関節症】
arthrosis of the temporomandibular joint; temporomandibular joint dysfunction
顎関節部の疼痛,雑音,異常顎運動(ことに開口が制限される)などを症状とする非炎症性の慢性疾患。一側性のことが多い。顎関節を動かす筋肉群が興奮しやすくなっているためといわれ,その原因として外傷,過度の開口,不正咬合,不適合の充填補綴物,精神的ストレスなどがあげられる。 20歳代の女性に多い。治療には,まず原因を取除き(咬合処置など),?物理療法(赤外線,超短波など),薬物療法,顎運動練習などを行うが,手術を必要とする場合もある。
ブリタニカ国際大百科事典
等々
で、この紹介している世界に、身体の事は含まれていないから、身体は別と捉えられているのではないかと言うのが、実際では無いかと思ってもみたりする。
Temporomandibular pain and dysfunction syndromeとsyndromeという言葉をあえて、先人達が導いた以上、実は、十分に顎関節部以外の波及を認めていると言えるのではないか?
言葉って必ず、導いた人間の集約系でもあると思うのだが…
しかし、顎以外は無いが、世間常識。では、あたしを頼る患者は?と、やはり常識が無いのかと、その、非常識さを悩む。