“いやぁ、前は何カ月に１回は顔を出しよりました。今は、年に１回あるか、無いか…”
もう任せっきりですわ。いったい、どうなっているのかは分かりませんが。と、寂しそうに呟くクーさん。
ん？一瞬、興味が改めて湧く。感じた大阪弁を介す嫌悪感よりも、別の何かを感じる。不思議な感じだ。
昔、いつの頃か分からないが、多分、そう古くはないはずだ。日本のメーカー主導で開業医を世界で（東南アジアで）開業をさせようとした動きがあったようだ。何となく小耳に挟んだ経験がある物の、当時、興味が無かったから聞き流していた。
だって、国内で上手くいかないから、上手くいく可能性のある海外でやろうというのも…ライセンスはその国の人には使えないが、駐在している日本人相手に活躍をしようと言うのも…現地の人は、現地のドクターを雇えばいい。それで解決。
確か、こんな話だったと思う。あたしの理解した、キャッチコピーは、保険というレベルの低い治療ではなく、高い自費治療を出来る国で活躍しませんか？だったような違うような…（何だか、何かの勧誘みたいですね）記憶っていい加減ですしね？
でも、保険すらまともに出来なくて、いきなり自費治療？それでいいのかな？これが当時何となく思った事。保険が駄目だという限界論を語る事は、誰にでもできるけど、どう限界か、どうして限界か知らずに語る事も仕方が無いと当時思った。（だって、安すぎる評価で無理な治療をしない限り、経営が成立しない国内環境って本当かどうか疑問に思いませんか？これ、当時のあたしの心境。ま、それに流されると、腕が荒れて…と、まあ、変な循環ですわ。）
地元に土着するかしないかは分からないけれど、
そんな話を二人が始める。見ず知らない土地、見ず知らない異文化、そこにいる何も分からないお上りさん。（これが、あたし）そこに、タイを土俵に、土着したクーさん、タイを起点に事業を展開しているウッチャン。よく分からないまま、勢いの『ええぃ！ままよ』そんな勢いで、座っているあたし。既に交流がある二人。さて、はてどんな顔をしていればいいのだろう？ふと、心で呟くあたし。
と同時に、懐かしい光景が心で広がってくる。
昔暮らしていたアマゾンで、ブラジルに土着した日本人とブラジルと言う土俵を介し仕事をしている大人たちが、何も分からないまま日本を発ち、只、仕事を求めに来ましたという、日本の若者に対して手厳しく意見をしている現場を眺めながらいた少年の頃と同じような感覚だ。
只、その当時と、今の違いは、言葉を知ったせいかもしれないが相手の先生はきっと高学歴だが、行動を聞く限りは無教養というか、目的意識が希薄というか、更に手厳しい事を言えば危機管理が出来ていないような…こんな事を分析してしまう自分がいる。
何故、そんな事が起きるのか時々、不思議だったのだけれど、こう言う現場に立つと何となく理解が深まって来る。別に、多分、大した理由では無い。見方を変えると、根は深い物が当然あるだろうか？
一言で言えばガラパゴス化と言う表現が適切なのかもしれない。価値のガラパゴス化、感覚のガラパゴス化とでも言えばいいのだろうか？日本では通用しても、決して世界の感覚では通用しない常識とでも言えば良いのだろうか？日本のいい所で、世界の常識とはかけ離れている物とか、そんな見方が成立するのかもしれない。ガラパゴスと言う言葉だけは新しく表現された言葉かもしれないけれど、実際は、言われて久しい言葉のような気がする。
何故だろうと、また悩む。
タイに土着と言う人生を選び、それなりにタイと言う国を愛してやまないクーさん。そんな事を感じた。
日本では保険制度があるから、見方を変えれば、治療を受ける意識だけを渡せば、安く受診が出来るという風潮が生まれやすいのかもしれない。でも、その分、患者が来れば、来さえすれば、何とか経営が成立する傾向があるのかもしれない。
一般的に、日本程、保険制度が充実している国は無いのかもしれない。だから、何も考えずにもオープンすれば何とかなるだろうと、深く考察や洞察が出来なくなっているのかもしれない…