予防に対する認識 2
2025/03/05
1)看護師からの問いかけ
私は、フリーランスで衛生士の仕事をしています。これは私の選んだ生き方です。
休日診療のある日、同僚の看護師より質問が来ます。
「歯科にも1次予防、2次予防、3次予防という考え方があるのかな。」
瞬間、私は答えに窮します。
彼女の問いかけは、無邪気にただ一言。「あるよ。」と言う答えを求めていたのでしょう。ですが、私は答えに窮したのです。
そこより、いくつもの葛藤が自らの心に生じた事も思い出します。表現にすると、難しい事を考えたのかしらと、お感じになられる人。想像を膨らませる方もおられるかもしれません。
葛藤した内容を、文面にすると実はたいしたことが無いというのが、私の経験。
ですが、感情となるとあちらこちらに揺らぎ、葛藤をする訳ですから面白いものです。振り返ると、そのように思います。
きっと、そこには受け入れたくない自分。受け入れないと行けない自分。何割で良いから、受け入れないで済む自分と分裂するが如くの行為が心の中で起こるから葛藤が生じるのでしょう。
私達衛生士の多くは、予防を臨床で行いたいと希望を持って現場に挑みます。これを心の中の旗にしていると、私は信じます。
かくいう私も、過去、衛生士として予防で活躍したいと思って、現場に立とうとしたことを思い出します。
2)葛藤の理由
只、冷静に歯科の予防を捉える場合。歯科は、歯科予防と言う括りに総括されます。これは、一次予防に該当します。
そして、2次予防より向こう、即ち3次予防までは、一般開業医の臨床に於いておなざりにされていると認めざるを得ません。更に、私にとり厄介な事は、若い衛生士は勿論の事、ベテランの域に入った衛生士すら、いえ世界中の衛生士がもしかしたら、この事実を気が付いていないのです。
この事が脳裏に駆け巡った時、私に葛藤が生じます。
・どう答えよう。
・世界の実情をこの人に訴えればいいのだろうか。
・訴えた所で、この人は困るだけだろうし。
・私は、この生き方で良いのだろうか。
・素直に、歯科予防は自信あるよ。これって、凄いのだよと、聞かれた内容と違う事を承知で茶を濁すか。
・どうしよう。
この事実に私が気が付いたとき、私の築いてきたもの。それが、仮に小さなものであれ、大事なアイデンティティ、そう、私の存在意義が壊されかねません。
だって、歯科予防に全てと信じながらここまでやって参った私です。
だからなのでしょうか。「ん、まぁ。」こんな返事しか言えない歯切れの悪い私がそこにはいました。そして、妙な落ち込み感を、こすが歯科に持ち込んでしまったようでした。
私は、歯科の名誉を守ったのだろうか。それとも、歯科の尊厳を貶める側に立ってしまったのだろうか…
嫌な感覚だけが残ります。
3)歯科予防の括りから出てみると
歯切れの悪い返答しかできなかった私でした。
嫌な感覚だけが、妙に残ります。
こすが歯科の勤務日の夜。仕事を終えて、院長に相談がてら、先日あった話を報告しました。
「院長。休日診療の仕事の日。一緒に働いている看護師から、歯科って1次予防、2次予防、3次予防ってあるのと聞かれたのです。」
ふ~ん、それで、どう答えたの。院長は聞き返されます。
私は迷いつつも、正直話します。
どう答えてよいか、分からず、歯切れの悪い中途半端な表現しかできませんでした。
私の描写になるかもしれませんが、院長はかっと目を見開き私を確認したように感じました。
僕は、一次予防から3次予防まで意識して臨床に挑んでいるけれど、君の認識は違うようだね。
私は意味が捉えられなかったのでしょうか。どう答えてよいか分からず、私が困った際に口をモゴモゴさせるという院長指摘の癖をどうやら行いながら、返す言葉を探していたようです。探しても探しても、今度は私の返す言葉が空虚になる可能性を感じ、又、葛藤が始まります。
何を返そう。どういえば良いのだろう。どういえば、彼は納得するのだろう。そんな事を、葛藤しながらいる折、彼の言葉が私に届きます。
「聞こえているか。1次予防、2次予防、3次予防の定義を教えてくれないか。おい、聞こえているか。いい加減、自分の心の中にいる事を止めて僕に集中してもらえないか。」
私の口のモゴモゴは続く。
「君から時間を欲しいと言ってきて、勝手にドツボに嵌るって、相手に失礼とは思わないのか。」
モゴモゴに対し改めて自覚を持ちながらも、ようやく院長の声が届く。
院長は、もう一度私に問いかける。
一次予防、2次予防、三次予防の定義を教えてくれる。
私は、モゴモゴ状況を何とか止める事が出来た。そして、答える。
予防は、歯科予防です。
二次予防は、早期発見・早期治療です。
三次予防は、リハビリです。
院長は、う~ん、では、歯科予防は、何次予防?質問を繰り返す。
私は、壊れたテープレコーダーのように歯科予防が予防です。
二次予防は、早期発見・早期治療…と同じことを繰り返す。
1次予防の中に、歯科予防が含まれ、それを括る形で歯科予防と表現しているのじゃないか。確認だけど、君は括るという意味を取れているのかな。
この括るという意味を私が取れるようになるのは、実は相当に時間を要しました。
では、僕から問いかけ直すから、はい・いいえで答えてくれないかな。
1次予防の中に、歯科予防は含まれる。私は、はいと答えた。
2次予防は、早期発見・早期治療を起点とし、悪化させない事。即ち、3次予防を求める状態にしない事。私は、はいと答えた。
3次予防は、リハビリと言う言葉に集約されるように、機能の回復を考えながら社会復帰。社会活動性の回復を図る。
私は、はいと答えた。
院長は、私にきつく言う。いえ、私の心が勝手に感じただけかもしれない。
踵を返すが如く、何かに対し反応し考える事は素敵だと思う。そして、その迷いに対し、解決を図ろうとする姿勢も立派だと思う。でも、考えるにあたって何も整理されていないこと自体は、相当に問題だと思う。
少なくとも、君は予防の定義を頭にしまいませんか。
院長の指摘だった。正にその通りだ。
同時に彼は、私に対し患者の処置を振り返らせた。その結果、私なりに気が付く。
この職場は、一次予防から三次予防までを適宜織り交ぜて、臨床で活かしている。
ここなのかもしれない。
私が葛藤する根源は。
自身の中で整理と、臨床で3次予防まで活躍させている実態を言語化せずに流している私自身に問題があったのかもしれない。
ここなのかもしれない。
そして、次の休日診療の日。
同僚の看護士に伝えた。
私の働いている職場では、当たり前に一次予防から三次予防までを行っているよ。
そうだよね。同僚は返した。
その返しが、私には妙に嬉しかった。
術前
術後
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